漢方医学で養える包括的な視点

漢方医学では心身を一体とみなし、精神疾患と身体疾患を分けて考えません。患者個人を全体として捉え、心と身体が相互にどのような作用を及ぼしているか個体ごとに考察し、自然治癒力による回復を目指します。
疾病を万人に共通の単なる物理的現象とみなすのではなく、患者の人柄から身体的特徴まで包括的に精査することにより、個別に疾病の原因を突き止めようとするのが特徴です。こうした考え方は、西洋医学に基づく現代医療には積極的に採り入れられていません。

しかし、漢方薬が保険適用になったように、漢方自体はその存在意義を認められつつあります。
手術や投薬によって特定の患部に集中した治療を行う西洋医学だけではもの足りず、漢方医学の視点を求める看護師が増えています。漢方をテーマとする医療従事者向けのセミナーには、多くの看護師が参加しています。
漢方医学の発想を学んだ看護師は、患者に対する見方を変えるきっかけを得ることができます。看護師が漢方という視点を持つと、患部に対する看護ケアだけでなく、患者個人の全体像を把握して、個人に合った看護を考えられるようになります。

平均的なデータを基に作り上げられた西洋医学に基づく看護のマニュアルは、どうしても多数者向きの内容になりがちです。しかし実際には、患者個人に適した様々な形態の看護ケアがあり、看護師はそれを見極めて看護しなければなりません。
この際に、役に立つのが、漢方医学の考え方です。患者個人を尊重し、心身を一体化して捉えようとする看護師の姿勢により、患者の医療に対する信頼感は増すでしょう。